漫画やアニメが好きです。主にNARUTOを語っています。たまに二次創作もしてます。初めてきた方は「はじめに」を読んで下さい。
※現在ほぼ更新停止状態ですが管理人は元気です。
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ライム
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女性
趣味:
妄想
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2015/11/20 (Fri)
土影に就任して暫くは、顔見せやら書類の整理やらに追われて、それこそ寝る間もなかった。やっと一段落した引き継ぎに、先代土影の孫娘、黒ツチはふうと息を吐く。
「あー……疲れた。息抜きしねーとおかしくなる」
己の身体及びに精神状態の申告を聞いているのは補佐の赤ツチだけだ。数年来の付き合いということもあり、彼は全てを心得たように苦笑した。
「ちょっと外に出てきたらいいダニ。でも引き継ぎの書類が終わっただけで、日常の仕事は今日も普通にあるんだから、一時間くらいで帰ってくるダニよ」
「了解!」
元々動くのが好きな性分。デスクワークなど長時間続けていられないのはお見通しだったのだろう。すぐに出た時間制限付きのお許しに、それでも黒ツチは口の端を上げて窓から飛び出した。
時刻は未の刻あたりか。土影になったのだから、と普段はあまり行かないような通りを歩いてみる。土の国全てを把握するのは難しいだろうが、せめて岩隠れ内の道や店は把握しておこうというわけだ。もちろん単なる理由付けで、本心は自分の足で歩けさえすれば目的地はどこだっていい。
ふと雑貨屋が目に入った。オシャレな小物に興味のない自分は、こんな店には入ったこともない。だが何か、自分の興味を引く物があった気がして、足が止まった。
見たところ普通の雑貨屋だ。自分と同年代かそれより少し年上の女性が好んで来店しそうな。入口から見える範囲をじっと覗く。
ものの五秒程度だっただろうか。思ったよりも入口の近く。レジの横にそれを見つけて、思わず黒ツチは店に入ってしまった。
「すみません」
「あらぁ土影様! いらっしゃいませ」
呼びかけに答えたのは、四、五十台の物腰の柔らかい女性だった。おそらく店主だろう。黒ツチは軽く会釈して、目的の物を指差す。
「これって」
「ああ、申し訳ないのですが、これは売り物では……」
他の客にも問われたことがあるのだろう、慣れたように言いかけた言葉は、ハッとした女店主によってふつりと途切れた。
「あ、……いえ、その、これは、……」
顔が青ざめている。相手が黒ツチであることを意識したせいだとはすぐにわかった。この反応と言うことは、知った上で、これを置いているのだろう。黒ツチは苦笑して片手を振った。
「ああ、いや、大丈夫。何か言う気はねーよ。作品に罪はないんだし。……これ、触ってもいいか?」
「ああ、もちろんです」
ほっと肩の力を抜いた女店主が笑顔で頷く。黒ツチは片手でそれを撫でた。
デフォルメされた、梟の置物。色は塗られていない。芸術に関する知識なんて持ち合わせていないから、中に紙でも入っているのか、その辺はよくわからないが、少なくとも表面は粘土だ。
「……懐かしいな」
吐いた息に溶かした言葉を聞き、女店主は目を細めた。
「……昔は、仲良くていらっしゃいましたね」
「知ってんの?」
「これを買ったとき、売り場の隣にあなたもいたのですよ」
「ああ、何度も冷やかしに行ってたからなぁ」
懐かしい。もう一度そう呟いて、黒ツチは店を出ようと女店主に礼を伝えた。彼女は「いえいえ」と明るく答えた後、……少し思案し、「あの、」と遠慮がちに声を掛けてきた。
「……土影様の、ご興味があるのなら……この通りや、一つ向こうの通りは、まだ持っている方が結構いるのですよ。私はこの小さな置物だけですが、もっと大きい作品を所持している方も……。お時間があれば、どうですか? みんな、大切にしているので綺麗ですよ」
黒ツチはぱちくりと瞬いた。ぐらりと気持ちが揺れた。だが制限時間が迫っていることはわかっていた。
「ありがとな、今度時間できたら絶対見に行く。……これからも、大切にしてやってくれ、それ」
白い梟を見ながら言うと、女店主は「もちろんです」と力強く頷いた。
「どうだったダニ?」
「ん、気分転換はできた」
「それじゃこれに目を通して欲しいダニ」
「……何枚あるんだよこの高さ」
「今日中には終わる枚数ダニ」
土影の公務室に戻り、積み上げられた紙にうんざりする。だが言ってもしょうがない。手を動かせばいつかは終わるのだと、黒ツチは右手にペンを取った。見届けた赤ツチは追加の文書を取ってくると言い残して席を外した。
三枚ほど片付けて、ぴたりとペンが止まる。さっき見た粘土の梟が脳裏にチラついた。
「……はは、デイダラ兄、ざまぁねぇな」
空気中に吐き出された呟きを聞く者はいない。もちろん部屋の前ですぐ駆けつけられるように控えている忍は数名いるのだが。
「デイダラ兄の作品が、こんなに大切にされて今でも残ってんだぜ。壊したいだろ、壊せねぇよな、いい気味だ」
今頃は地獄に落ちているだろう男を思い、黒ツチは喉の奥で笑った。
抜け忍には死罪が鉄板だ。だがあの自殺志願者にそんなものがどれだけ効くのか。本人からすれば自分で死ぬか他人に殺されるかで大分違うのかもしれないが、こっちからすれば些細なことだ。ちゃんとした罰を与えられた気がしない。
一瞬で消えてこそ完成するらしいアイツの作品が、今もなお、綺麗に元の形を保っている。それをこれからも大切に残していく。あの抜け忍への罰として、これ程相応しいものもないのではないか。
「……なんて、な。さすがに強引過ぎるか」
返事を返す者もいない中、黒ツチは再度喉の奥で笑った。
あの男が死んだときにできた大地の抉れなど、取るに足らないことなのだ。周りには人家もなく、木々が広範囲で消えたのが多少の痛手だという程度。むしろ範囲が広すぎて、そこを訪れても元々こんな地形だったんじゃないかと錯覚してしまう。
だから、別の形で、アタイに分かりやすい形で。少しでも、アイツが生きた証を。
「……残してやるよ、ざまぁみろ」
空に向けた言葉は、天井に跳ね返った。だが満足だった。
黒ツチはペンを持ち直す。気分は上々。目線は流れるように文字を追い、ペンはさらさらと追加、訂正、サインを書いていく。ここ最近で一番捗っている気がした。
・終わり・
黒ツチとデイダラさんの妄想が止まらない。
デイダラさん愛されるべきとは口が裂けても言えないけど
(爆発に目覚める前の)作品は愛されててもいいんじゃないかと思ってる。
黒ツチはデイダラさんにとって共感者ではないけど理解者ではあったと思う。
そんな妄想。
これの設定引き継いでるけど読まなくても差し支えありません。
デイダラさんが抜け忍になる前に忍稼業と並行して
自分の作品売って生計立ててたことだけ抑えてれば大丈夫です。
注意事項
・黒ツチが土影になった後のお話
・デイ黒なのかデイ←黒なのか
・岩隠れの通りはほぼ木ノ葉と同じイメージ
よろしければどうぞ。
デイダラさんが抜け忍になる前に忍稼業と並行して
自分の作品売って生計立ててたことだけ抑えてれば大丈夫です。
注意事項
・黒ツチが土影になった後のお話
・デイ黒なのかデイ←黒なのか
・岩隠れの通りはほぼ木ノ葉と同じイメージ
よろしければどうぞ。
土影に就任して暫くは、顔見せやら書類の整理やらに追われて、それこそ寝る間もなかった。やっと一段落した引き継ぎに、先代土影の孫娘、黒ツチはふうと息を吐く。
「あー……疲れた。息抜きしねーとおかしくなる」
己の身体及びに精神状態の申告を聞いているのは補佐の赤ツチだけだ。数年来の付き合いということもあり、彼は全てを心得たように苦笑した。
「ちょっと外に出てきたらいいダニ。でも引き継ぎの書類が終わっただけで、日常の仕事は今日も普通にあるんだから、一時間くらいで帰ってくるダニよ」
「了解!」
元々動くのが好きな性分。デスクワークなど長時間続けていられないのはお見通しだったのだろう。すぐに出た時間制限付きのお許しに、それでも黒ツチは口の端を上げて窓から飛び出した。
時刻は未の刻あたりか。土影になったのだから、と普段はあまり行かないような通りを歩いてみる。土の国全てを把握するのは難しいだろうが、せめて岩隠れ内の道や店は把握しておこうというわけだ。もちろん単なる理由付けで、本心は自分の足で歩けさえすれば目的地はどこだっていい。
ふと雑貨屋が目に入った。オシャレな小物に興味のない自分は、こんな店には入ったこともない。だが何か、自分の興味を引く物があった気がして、足が止まった。
見たところ普通の雑貨屋だ。自分と同年代かそれより少し年上の女性が好んで来店しそうな。入口から見える範囲をじっと覗く。
ものの五秒程度だっただろうか。思ったよりも入口の近く。レジの横にそれを見つけて、思わず黒ツチは店に入ってしまった。
「すみません」
「あらぁ土影様! いらっしゃいませ」
呼びかけに答えたのは、四、五十台の物腰の柔らかい女性だった。おそらく店主だろう。黒ツチは軽く会釈して、目的の物を指差す。
「これって」
「ああ、申し訳ないのですが、これは売り物では……」
他の客にも問われたことがあるのだろう、慣れたように言いかけた言葉は、ハッとした女店主によってふつりと途切れた。
「あ、……いえ、その、これは、……」
顔が青ざめている。相手が黒ツチであることを意識したせいだとはすぐにわかった。この反応と言うことは、知った上で、これを置いているのだろう。黒ツチは苦笑して片手を振った。
「ああ、いや、大丈夫。何か言う気はねーよ。作品に罪はないんだし。……これ、触ってもいいか?」
「ああ、もちろんです」
ほっと肩の力を抜いた女店主が笑顔で頷く。黒ツチは片手でそれを撫でた。
デフォルメされた、梟の置物。色は塗られていない。芸術に関する知識なんて持ち合わせていないから、中に紙でも入っているのか、その辺はよくわからないが、少なくとも表面は粘土だ。
「……懐かしいな」
吐いた息に溶かした言葉を聞き、女店主は目を細めた。
「……昔は、仲良くていらっしゃいましたね」
「知ってんの?」
「これを買ったとき、売り場の隣にあなたもいたのですよ」
「ああ、何度も冷やかしに行ってたからなぁ」
懐かしい。もう一度そう呟いて、黒ツチは店を出ようと女店主に礼を伝えた。彼女は「いえいえ」と明るく答えた後、……少し思案し、「あの、」と遠慮がちに声を掛けてきた。
「……土影様の、ご興味があるのなら……この通りや、一つ向こうの通りは、まだ持っている方が結構いるのですよ。私はこの小さな置物だけですが、もっと大きい作品を所持している方も……。お時間があれば、どうですか? みんな、大切にしているので綺麗ですよ」
黒ツチはぱちくりと瞬いた。ぐらりと気持ちが揺れた。だが制限時間が迫っていることはわかっていた。
「ありがとな、今度時間できたら絶対見に行く。……これからも、大切にしてやってくれ、それ」
白い梟を見ながら言うと、女店主は「もちろんです」と力強く頷いた。
「どうだったダニ?」
「ん、気分転換はできた」
「それじゃこれに目を通して欲しいダニ」
「……何枚あるんだよこの高さ」
「今日中には終わる枚数ダニ」
土影の公務室に戻り、積み上げられた紙にうんざりする。だが言ってもしょうがない。手を動かせばいつかは終わるのだと、黒ツチは右手にペンを取った。見届けた赤ツチは追加の文書を取ってくると言い残して席を外した。
三枚ほど片付けて、ぴたりとペンが止まる。さっき見た粘土の梟が脳裏にチラついた。
「……はは、デイダラ兄、ざまぁねぇな」
空気中に吐き出された呟きを聞く者はいない。もちろん部屋の前ですぐ駆けつけられるように控えている忍は数名いるのだが。
「デイダラ兄の作品が、こんなに大切にされて今でも残ってんだぜ。壊したいだろ、壊せねぇよな、いい気味だ」
今頃は地獄に落ちているだろう男を思い、黒ツチは喉の奥で笑った。
抜け忍には死罪が鉄板だ。だがあの自殺志願者にそんなものがどれだけ効くのか。本人からすれば自分で死ぬか他人に殺されるかで大分違うのかもしれないが、こっちからすれば些細なことだ。ちゃんとした罰を与えられた気がしない。
一瞬で消えてこそ完成するらしいアイツの作品が、今もなお、綺麗に元の形を保っている。それをこれからも大切に残していく。あの抜け忍への罰として、これ程相応しいものもないのではないか。
「……なんて、な。さすがに強引過ぎるか」
返事を返す者もいない中、黒ツチは再度喉の奥で笑った。
あの男が死んだときにできた大地の抉れなど、取るに足らないことなのだ。周りには人家もなく、木々が広範囲で消えたのが多少の痛手だという程度。むしろ範囲が広すぎて、そこを訪れても元々こんな地形だったんじゃないかと錯覚してしまう。
だから、別の形で、アタイに分かりやすい形で。少しでも、アイツが生きた証を。
「……残してやるよ、ざまぁみろ」
空に向けた言葉は、天井に跳ね返った。だが満足だった。
黒ツチはペンを持ち直す。気分は上々。目線は流れるように文字を追い、ペンはさらさらと追加、訂正、サインを書いていく。ここ最近で一番捗っている気がした。
・終わり・
黒ツチとデイダラさんの妄想が止まらない。
デイダラさん愛されるべきとは口が裂けても言えないけど
(爆発に目覚める前の)作品は愛されててもいいんじゃないかと思ってる。
黒ツチはデイダラさんにとって共感者ではないけど理解者ではあったと思う。
そんな妄想。
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